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朝日新聞社
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反原発側に偏ってはいないか?
(2007-11-22)
第一章では、放射能が大気中に漏れた事例と、放射能を含んだ水が海水へ漏れた事例について、住民の声などを中心に東電や原発に対する不信の声を多数取り上げています。「どうしてもっと早く公表してくれなかったの?村民をバカにしている」とか「余震だけでも怖いのに、放射能まで漏れていたなんて。」とか。それ以外にも反原発派のコメントも同様に取り上げています。
なるほど。「大気中と海水に放射能が漏れた」などと聞くと実に恐ろしい事態に聞こえます。そして本書を読んでいるとそれが大変なことのように思えてきます。
ですが、実際にはどうだったのでしょうか?
まず大気中への放出ですが、4億ベクレルで、発電所の周囲にいた場合の被爆量は1000万分の2ミリシーベルトです。一般公衆が1年間に受ける放射線量は2.4ミリシーベルトであることを考えれば十分に小さい。東電も国も人体への影響は少ないとしています。また、海水に漏れた放射線量はラドン温泉9リットル分にすぎないのです。
これらの事実は書中に書かれています。しかし、記述量の大部分は原発がいかに重大な被害を受けたかに費やされていて、それに隠れるようにちょろっと事実の記述がされているのです。見出しは「放射能大気へも」などと書かれていては、いくら実際には問題にならないくらい微量だったとしても、誰もそうは受け取らないでしょう。これでは記述の均衡を欠いていると思うのです。
他にも、ドラム缶につめられた放射性廃棄物が転倒した様を大きく写真入で解説しています。で、どれほど大変なことが起きたのかと思えば最後に「貯蔵庫内の空気中からは放射性物質は検出されなかった」と、、、、、
無論、たとえどんなに微量でも放射能漏れなどあってはならない、というのはよく理解できます。ですが、どうもフェアではないな、という印象を受けてしまうのです。むしろ、想定の数倍の揺れであっても、原子炉を「止める」「冷やす」「閉じ込める」という、原発の安全を考える上で重要な機能は維持されたとは考えられないのでしょうか?
事実、土木学会や建築学会等の合同調査結果で代表が「あれぐらいの被害でよく収まった」と賞賛し、報告会に参加した専門家達の見方も、大方で一致していた、としながら、「裏を返せば、一歩間違えれば、深刻な事故が起きていても決して不思議ではなかったことになる」と結論付けをしているのです。これまた強引な、と思います。
ということで、客観的を装いながら反原発を煽る感が強い本であり、あまり評価できない部分が多いです。
「風評被害も広まった」などと述べられていますが、そもそもメディアが正しく報道していればそんなことなどおきないわけですよね。どうしてそんなことがわからないのか。
とはいえ批判ばかりでもいけないですよね。第3章での原発耐震指針の改正作業についてのレポートは、その過程がよくわかり、また、相当に民主的でかつ安全側に振った物になりそうだということがよくわかリました。「残余のリスク」を認めるようになった点の記述については収穫でした。その点は評価します。

