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講談社
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清水幾太郎 最後の主著
(2007-04-02)
渾身の力作とはこのことで、兎に角、邦語訳のほとんど無いような文献ばかり渉猟し山のように読みまくった結果に出来たような本だ。といっても悪口ではなく、著者の力量、格闘ぶりを如実に表す金字塔として強く推したい1作。ムーア、ケインズ、ヴィトゲンシュタイン、ヴィーコ、コントと独特の視点で思想の水脈を掘り起こし(といっても至極妥当)、対峙させて、著者独自の見解を盛り込む。咳き込むような勢いで書かれている全編に惹かれて一気に読み込んでしまう。ムーア、ラッセルの論理実証主義のバックグラウンドからケインズへと論じるあたりは、必ずしも多く紹介されている文脈ではないので楽しかった。他にも随所に、思想史の機微に触れる面白さはある一方、経済学の基礎理論をしっかり抑えてその思想的な意味へと迫り、疑義を呈する辺りは、著者の力量を物語る。清水幾太郎は、雰囲気に流れやすい人文・社会思想系の学者ではなく、商社マンになっても大成しただろうような、現実感覚と嗅覚、生活力があって、それが、「我が思想の断片」など自伝に類する著作では無類の魅力になっている。が、そのせいで、批判や批評は卓抜でも、どこか自分の思想的な位置は動いてばかりではっきりしない恨みは残る。コントやデューイをやっても、エッセンスだけの紹介で奥に進まない。どこか軽く扱われやすい所以だが、本書は、同氏の本気の力量がみなぎり趣は他の著作とは異なる。が、それでも、対象にぶつかっては何かをつぶやきながら先に進んでしまう体質は同じで、全編読んでも、釈然としないものが残る。「現代」では、その釈然としなさ、これが、真摯な思考の「状態」なのだ、そういうことを示しているのかもしれない。

