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講談社
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発売日:2007-09-07
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カスタマーレビュー ![]()
同時代を生きるために読むべき1冊。
(2008-04-19)
個人的に日々漠然と感じ、それでも毎日の生活の中で流れ忘れてしまう思いや危機感を、系統、理論立てて読むことができる1冊です。
このエッセイを読むと2000年代という一つの時代が、世界が少しずつ少しずつ悪くなっている過程であるということを改めて痛感します。
もちろん時は綿々と連なる流れですから、それ以前の時代の中に悪化への伏線があり、このエッセイの中で危惧される予感が次世代の更に悪くなる世界の萌芽にもなると思います。
そういう意味で一つの時代を切り取る本書は、同時代を生きる我々が読むべき1冊ではないでしょうか。(多くの問題の原因の一つは無知からくるものだと思います。)
池澤夏樹さんのエッセイは以前から自然、科学、読書、映画と興味深い話題が多くとても好きなのですが、最近の政治、世界における目線にも強く感銘を受けます。

限りない不安と不満からいかにして希望を見出すか…
(2008-03-09)
池澤夏樹が2000年〜2006年に月刊『現代』を中心に雑誌や新聞に寄せたコラムを
年別に集めたコラム集です。
著者も言っているように、本人が政治的な人間だと思っていないために、やや稚拙とも
言われかねないコラムが9・11を取り巻く時代的な要請もあり多数載せられています。
また、池澤夏樹が沖縄在住からパリ郊外へ居を移す時期とも重なり、多彩な視点から日本を
定義しなおしており、今なお論点が定まらない議論にも早くからの鋭い切り口でのコラムも
あります。
政治、教育、経済そして国際社会と様々にテーマは変わりますが、やはり日本を憂い、そして
行く末を思う、絶対的な絶望の中に少しの希望を見出そうとしている、そんな気持ちが伝わって
くるコラム達です。
昨今、マスコミから流れてくる情報は不安と不満を煽り、拠り所を無くしかけている私たちに
自分の頭で考えて、自分の足で前へ進む、そのために何をするべきか、そんなことを正面から
問いかけてくれる本書は今まさに必要とされる本なのかも知れません。

当たりはずれはあろうが、予言者めいた言辞が頼もしい
(2007-09-29)
本書から【警句】と言うべきフレーズを抜き出してみたい。
ケータイの電波が脳を温め、腫瘍を引き起こすという不安にリンクする。(「脳を温める」27頁)
丘でさえない「希望が丘」に何の希望があるのか。(「地名は古きを良しとする」61頁)
鳥瞰は細部を捨てて客観性を得るが、人はその細部にこそ生きている。(「現代」85頁)
個人の能力や性格にまで及ぶ遺伝子決定論は、たとえ比喩としても誤謬であり、人間の尊厳を損なうものである。(「打たれ弱い遺伝子」111頁)
夫の嘘は浮気を隠すだけだが、政治家の嘘は人を殺す。(「政治家の嘘は人を殺す」173頁)
ぼくからの警告ー「日本は右へ曲がります。ご注意下さい。ご注意ください」ここにも内輪差がある。…それよりずっと右寄りを、やがて重い太い後輪が通るのだ。(「にぎやかな日本の私」213頁)
今この国に足りないのは愛国心ではなく、議員と官僚と資本家の愛民心である。(「愛国心を笑う」227頁)
アレグロの社会は息苦しい。ここで深呼吸して、モデラート・カンタービレ(ゆっくりと歌うように)に戻ることではないか。(「高密度サービス社会」233頁)
この人生、楽でいいけれど、どこか水で薄めたミルクのようではないか?(「現代」237頁)
2000年〜2006年の7年間に書いたさまざまなコラムを収載したもの。いずれも単発の短いものばかりで、読みやすく、言わんとすることがはっきりしている。タイトルは詩的だが、内容は厳しく現代批判に徹している。当たりはずれはあろうが、予言者めいた筆致が頼もしい.

虹の彼方に、は
(2007-09-10)
虹の彼方に見えるものはなんだろうか・・・って。
新世紀へようこそからの読者です。以来、小説もコラムも詩も・・・と池澤氏の作品を網羅してきました。
新世紀へようこそ、も、イラクの小さな橋を渡って、も、またネット上のコラムなんぞを時間を、時代を追って読んできて、いまやっと虹の彼方に、とページを進めてきました。
20世紀末から、21世紀に渡って、池澤氏の作品を読んできておりますが、読書と平行して自身が考えてみる、という時間と、考えていく、という意識をこうやって続けていこうとは思ってもなかった。貴重な体験です。
雨上がりの青い空に掛かる虹、その彼方に見えるものはきっと読者ひとり、ひとりがどういうものが見えてくるんだろうなんて思いました。

