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講談社
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カスタマーレビュー ![]()
村上春樹は木をみることに徹した
(2008-10-25)
地下鉄サリン事件の被害者一人一人にに村上春樹が直接インタビューして集めた体験談集。 『地下鉄サリン事件』 というひとつのテロ事件が日本人にとって一体どういうものであったか理解する上で,この本に勝るものはおそらく無いのではなかろうか。
マスコミによる地下鉄サリン事件の報道では,オウム側の犯罪手順や思想等について詳細な分析がなされたのに対し,最も苦しんだはずの被害者達は単に 『かわいそうな人々』 というカテゴリにひとくくりにされただけだった。 筆者は直接被害にあった人達の一人一人にじかに会って,彼らの生い立ちや仕事,生活背景などについて細々と話を聴くことにより,地下鉄サリン事件というものが一人一人の被害者の人生において一体どういう衝撃であり,どういう爪痕を残したのかを理解したかったという。
何か物事を理解しようとするとき, 『木より森を見よ』 という言葉があるが,筆者は木の一本一本をつぶさに眺めることに徹していた。 また, 『自分が現在前にしているインタビュイーの一人ひとりを,個人的に感情的に好きになろうとつとめた』 と語っていた。 人それぞれが異なった生活背景や人生経験,性格をもっているものだし,それぞれが人間社会のドラマの中で重要な役割を演じているものなのである。 人間というものの社会や歴史を見つめる場合も,そのことを忘れてはならないと感じた。
アンダーグラウンド (講談社文庫)

「職業倫理」という言葉が心に残った
(2008-06-15)
本書は、オウム真理教の地下鉄サリン事件で被害にあった方々に取材をしたノンフィクション。その中に地下鉄職員で亡くなられた高橋さんと同僚だった豊田さんのインタビューがある。豊田さんは、オウムみたいな人たちがが出て来ざるを得ないような社会風土、言い換えると「モラルの低下」を日々感じていたという(掃き終えたばかりのところにタバコを捨てる人がいる、など)。
村上春樹が「モラルは年を追うごとに低下しているのですか?」と素朴な気持ちで質問したら「それじゃ、少し勉強なさった方がいいですね。自分に与えられた責任を果たすより、他人の悪いところを見て自己主張する人が多すぎます」と毅然と答えた。そんな豊田さんに34年間現場で働いて培った「職業倫理」を村上春樹は強く感じたという。
私は、地下鉄サリン事件は「職業倫理」を持って私たちの生活を支えてくれている人々が脅かされたという点で本当に恐ろしい事件だったと本書を読んで、初めて感じた。
「一燈照隅 万燈照国」という言葉を、私は弁護士中坊公平さんの講演記事で知った(読売新聞朝刊99.4.28)。「1つの灯は1つの隅しか照らせないが、一人ひとりがその現場で一隅を照らせば、地域を興し、国全体を照らすことになる」という意味だ。
職業倫理を持ち、一隅を照らせる小さな光になりたい、と本書を読んで強く思った。
2002-09-09

「本の厚さ」に隠された村上春樹の「したたか」な狙い・・・
(2008-06-08)
私がテレビや新聞を見るたび感じてた「それでは、どこにもいけないではないか?」という感じ。それがこの本での主題になってると思う。ページ半分すぎでは、「もう。わかったよっ!」という少し嫌悪感のようなものが浮んでくる。被害者の気持ちは被害者にしかわからないが、それでも「前を向く」ということ=「原因を考えること」をしない限りは、私たちは同じような所をグルグルと回っているだけなのだ。オウム=悪という図式は、かなり短絡的である。社会の欠陥に隠された「歪み」を検討してみたい。アンダーグランド2では、黒白にしか分けられない最もピュアな人間たちの物語で「原因」が分かってくる・・・気がする・・・。

家庭の幸福がカルトの敵
(2008-02-23)
被害者達へのインタヴュー集。この時点では、まだ事件が完全に決着したわけではなかったせいか、容疑者やその挙措動作についての目撃情報は載ってない。
印象的なのは事件当初の人々の反応がどこか鈍い点だ。
人は日常的な場面で、あまりに非日常的な事態に遭遇すると、パニックを起こすよりも、むしろ神経が鈍磨してしまうのだろうか。ガスの効果がジワジワと効いてくるものというのもパニックにならなかった理由の一つかもしれない。また通勤の満員電車の中の人間関係は極めて特異なものだ。密着しすぎているので、お互いが迷惑を掛け合っているような気分になり、どこか刺々しい沈黙が支配している。268ページにあるように、人々の間にコミュニケーションも騒ぎもなかったのは、こんな理由によるのではないか。ただハッキリと異常事態を認識した後は、乗客同士おおいに助け合っている。日本の公的危機管理システムは、こういう例外的事態への対応が今も昔も酷く鈍い。頼りにならない。これからもそうだろう。坂本事件の際、マスコミが警察に気兼ねして、お粗末な報道になってしまったのは残念だ。
131ページの精神科医の「ケガレ」論も興味深い。ケガレ=悪ではないのだ。もっと日本人の深部にある解消不能の複合感情だ。
カルトの対極にあるものは「家族」だろう。明石さんの項を読んでそう思った。原始仏教、キリスト教から20世紀のマルクス主義まで、カルトは個人や家族のエゴイズムを完全否定する。しかしカルトから人を救うものは「家族愛」以外ない。だから家族ごとカルトに囚われたら最早救いはない。今後、家族が解体されて行くにつれて不気味なカルトの百鬼夜行状態になるかもしれない。

情景が伝わってくる
(2008-01-14)
本屋で立ち読みから読み始めたんですが、物凄い鳥肌が立ちました。映画や小説の中だけかと思っていたサリンという毒ガスを使った無差別テロ。日常の中に、本当に日常の中に突然現れた最悪の状況。
自分もこの後、丸の内線にのって学校に通ったため、あと何年か生まれるのが早かったらもしかしたら私の日常にも起こりえた事件。
やはりどこか他人事の用に感じてしまっていた事件。TVで観るとニュースの一時で終わってしまう事件。
被害者も善良な人。加害者も昔は私たちと変わらない普通の人だったはず。
こんなに鳥肌が立つ本は今まで読んだことありません。

