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新潮社
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カスタマーレビュー ![]()
日本にも本物の評論家がいた
(2007-12-23)
小林秀雄の書いたものは勉強にならないものがない。
「核心に迫る」という言葉があるが、彼ほどこの言葉の似合う人はいない。
また彼の評論には、現代の評論家たちがどこかに置き忘れている、
品位と読み手を引き込む知的探求心が備わっている。
日本の評論(評論家たち)は元来、エッセンスをつかむために、
エッセンスの周りにこびりついているカスのようなものをこすり集めて、
得意気に(或いは澄まし顔で)それらを振り回すだけのものが多い。
読後、「だから何ですか?」と執筆者に直接問いたくなる評論が実に多い。
そんな中、一足飛びにも二足飛びにも作品の本質に迫ろうとする小林秀雄の
評論は読んでいて、時に難しいが、実に気持ちが良く、爽快さ・痛快さすら感じさせるものもある。
本書は短編集であり、小林秀雄入門に最適な一書。
読書家のみならず、あらゆる芸術・学問を愛好する人、志す人に小林秀雄を読んでもらいたい。

言葉の重み
(2007-08-17)
今でも(月並みですが)文章や言葉の力、というものに気付かされた最初の書であったような気がしてます。あたかも年老いて節くれ立った松の木の枝振りを目で辿っていくような錯覚/幻惑を感じます。モオツァルトの一枚の写真から展開するくだりなどは、読者は一体どこに連れて行かれるのかという不安感さえ覚えます。その陶酔感が忘れられず手放せなかった時期が痛いように懐かしいです。どう書いたところで本書に近づける訳ではありませんが、やはり文学的にはひとつの金字塔といえるのではないでしょうか。

芸術論の精華
(2007-04-22)
20年ぶりに読み返してみて、その密度の濃さに感心した。ゲーテ、ベートーベン、ワグナー、ニーチェ、ヴァレリー、スタンダールなど芸術家の話を、興味深くに取り入れながら、モーツアルトその人の芸術を浮かび上がらせようとしているかのようだ。文章の巧みなこと、はなしのほかで、後代の批評家がかわいそうになるほどだ。エセーとは文章による芸術だ、と痛感させられる。だが、やっぱりこの人は個性が強烈過ぎて、この人の著述から、テーマになっている芸術家や作品が、ありありと浮かんできたためしは無い。本作品に限らず、「平家物語」だろうと「西行」だろうとそうだ。著者の作品は見事すぎるぐらい見事だけれど、どういうわけだろう。本当に、著者はモーツアルトを聞いてこんな風に感じたのだろうか。するとやっぱり「他人をダシにして己を語る」ということなのか。それは余りに品が良くないので、そうは思いたくない。モーツアルトは「オペラだ」という河上徹太郎の言い分が、少なくとも「対象」には合っている。本書は、どれも珠玉の傑作ぞろいの文庫本だ。

メランコリックなモーツァルト像
(2007-03-19)
音楽について批評するなどというのは愚かなことだと思う。ましてや、モーツァルトという大天才について、何を語ることができようか。それでも本書を買ったのは、やはり小林秀雄だからである。いきなりゲーテのエピソードから始まり、《僕の乱脈な放浪時代の或る冬の夜……》と自分の思い出を語り出す小林秀雄は、他の批評家とは異なっている。
《二重瞼の大きな眼は何にも見てはいない。世界はとうに消えている。或る巨きな悩みがあり、彼の心は、それで一杯になっている。》
これは全くの空想であるが、筆者の目にはこのようにメランコリックなモーツァルトが映ったことは興味深い。

平成18年8月に改版されました。
(2006-09-04)
そもそもこの本は昭和36年5月に初版が刊行され、平成3年11月に56刷改版。それが平成18年4月に74刷まで増刷して8月に75刷が改版となりました。では、今回の改版で何が変わったか? 3つあります。まずは版組が平成3年版よりゆったりしました。昭和36年版は1ページ18行(1行43字)、平成3年版は1ページ17行(1行41字)が、平成18年版では1ページ16行(1行38字)になっています。次に富岡鉄斎論が昭和23年の「時事新報」に発表された現行題「鉄斎1」だけだったのに加えて、昭和24年の「文学界」の発表の「鉄斎2」と昭和30年角川書店「現代日本美術全集第1巻」所収の「鉄斎3」計2編が増補されています。そして、「小林秀雄全作品」の脚注に基づいた注解が60数ページにわたってついています。上の画像は平成18年版(「小林秀雄」の文字がセンタリングされています。平成3年版は左寄せ)のものです。注解はおおむね辞書的なものですが中には梅沢万三郎の当麻を「著者が観た公演は昭和17年2月頃に行われたものと思われる」と踏み込んだ注解もあり星5つつけましたが、雪舟(や顔輝)の「慧可断臂図」や光悦宗達の図版もあるとより一層いいですね。

