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新潮社
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発売日:2006-08
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カスタマーレビュー ![]()
ローマ帝国を”リストラ”した男ハドリアヌス
(2008-07-19)
前帝トライアヌスを代父とするハドリアヌスの治世を描く本巻。
塩野氏は、ハドリアヌスに対する同時代人や歴史家の「疲れを知らぬ働き者」「機能と効率の信奉者」「天才的オーガナイザー」などさまざまな評価を紹介しながらハドリアヌスの人間性とその業績を浮き彫りにしていきます。
その治世21年のうち14年を帝国各地の巡行にあてた皇帝。それは、現代の企業の社長が現場を廻るような「視察」というレベルではなく、国境防衛線の強化・再構築の陣頭指揮など極めて精力的な仕事ぶりが印象に残ります。そして長い歴史の中で運用されてきた法の再整備を行い、整理した大事業。塩野氏はこれを評して「ローマ帝国を真の意味でリストラした人」と論じます。
就任直後の不人気から、その業績で評価を上げたハドリアヌス。その変遷がよく分かる内容になっています。

精力的な皇帝
(2007-10-04)
この歴史モノの面白さは、女性が作者であるということだ。
ゆえに、大奥的な一面を垣間見せることもあり男性作家では決して理解不能であったろう見地まで踏み込んだ見解を見せてくれる。
トライアヌスの皇后であった、プロティナにハドリアヌスが気に入られていたのが面白い。
「年上の女は、次代の勝者になりうる若者を愛するのである」・・・面白い。
プロティナの眼力は正しく、悠然とローマで構えていればいいものを、ローマ帝国の端から端までを視察して廻るという精力的な活動を行っている。その土地土地で的確な指示を出しては完成をみるまでものなく次の土地へと移動する。「自らの考えを実現するという幸運に恵まれた人と、その恩恵を享受する人とは、別であって当然」というのが凄い。なかなか出来ないことだと思うが彼はそれをやり続けた。たいしたもんだ。

百聞は一見にしかず
(2006-12-29)
このシリーズは、著者の歴史家のように事実だけを淡々として書くだけでなく、時折、豊富な文献を基に客観的に分析し、時に主観を述べるといった平易に書かれた歴史小説であることがローマ人を面白くさせている要因だと思うが、この巻のローマ人は、五賢帝の三人目に数えられるハドリアヌス帝の治世(若年期から壮年期)までを物語っており、他の皇帝と同様に、皇帝としての功績だけでなく人間性も描かれていて面白い。
壮年期までのハドリアヌス帝の治世に関して言えば、帝国全域の巡行が、単なる旅行気分での視察ではなく、帝国の現状を分析し、安全保障の再構築が目的だったことに皇帝の果たすべき使命感に並々ならぬ思いを感じた。
状況把握において、“百分は一見にしかず”に勝る物はないと思うが、ハドリアヌス帝は実際自分で足を運び、目で確認し、帝国の安全保障の再構築に努めたわけである。
ハドリアヌス帝のしたことは、征服戦争をして凱旋式を挙行するわけでもなく、矢継ぎ早に公共事業をするわけでもなく、帝国の安全保障と既存の建設物の修理など、派手ではないが、パクス・ロマーナを維持することにおいて、帝国の安全と食を保障し、十分すぎる程皇帝の責務を果たしたことに異論はない。
改革路線のトライアヌスを引き継いだことで、なにかと難しいこともあったかと思うが、元老院との関係維持をしながら、ローマ市民の指示も得たことに、実直な人間性の持ち主であったことが計り知れる。
次巻では複雑な性格の持ち主であったことも紹介されてはいる。確かに少しは気分屋な部分もあったと思うが、皇帝という職務をまっとうするには相当な重圧と戦わなければいけない。日常の激務から、解放され、心の落ち着く場所もなく、ぶつける場所もなければ、時に投げやりになっても仕方がない。常に一定の精神性を保つことは、並外れた精神力を持ってしても相当に難しいはずである。
実直な人間性であり、何事にも一生懸命に取り組んだが、不器用だった為に、著者が言う「一貫しないでは一貫した性格」と他人には写ってしまったことに人間として共感を覚えることも多い。
そして、保守的であっても、ローマ人の合理性を体現したことに、まさにローマ市民の“第一人者(プリンチェプス)”であったようにも思う。
ハドリアヌス帝を彫ったコインが現在に多く残されているのと、ギリシアかぶれが興じて、現在に残るギリシア彫刻がハドリアヌス治世の時代に模刻された物が多いことに、記憶より記録に残った皇帝であったと言っても過言ではないように思う。

