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中央公論新社
カテゴリー:Book
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発売日:2001-03
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病魔に倒れた著者の、完全な「未完作」
(2002-12-19)
本書は読むに当たって非常な注意を要する(お手にとられたら、まず巻末の解説を読むべきだ)。それは後にして、本書は著者による江戸時代の「政治的敗北者」の評伝の3作目とのこと。歴史には栄光に輝く多くの人物の裏に、多数の「敗北者」がいる。また一見、「成功者」に見えてもその生涯に暗部を持つ人物は多い(秀吉の朝鮮侵略などあまりに明らかな例)。しかし、成功者だけ見ていては「歴史」はわからない。むしろ「敗北者」「失敗」に歴史の多くがあり、それを批判的に検証することは極めて有益だと考える。それを「自虐的」というなら、歴史の何たるかを知らぬを晒すだけ。ゆえに、「敗北者」を追う著者の視点には大いに共鳴する。
しかし、本書は不幸な書となった。執筆中に著者が病に倒れたのである。ご家族の強い希望(それだけ著者は病身をおして書き続けたのだろう)で、著者を良く知る人々が出版にこぎつけた。彼らは「ほぼ脱稿状態にあると判断、最低限の誤りの訂正程度に留めた」と記しているが、申し訳ないがこの判断は愚見によればいささか甘すぎた。実際、章立てはしっかりしているし、井伊と長野の出会いから交流が深まるまでの記述は見事である。が、4章、5章になると病ゆえに構想したとおりに筆が進まない著者の苦しみがはっきりと文章に表れるようになり、肝心の大獄での二人の行動については実質的な記述が殆どないまま、井伊は暗殺され、長野も斬首されてしまう。著者の他書を読んでいないのでその歴史家としての記述力を私は知らない。しかし、冒頭部分の記述から、著者がお元気なら相当に魅力的な本になったことだろうと思う。結果的に失礼ながら、病気という事実を知らないと著者の名誉にならぬ本になっている。あくまで「未完」の書として、お読みになるべきで、「お元気でいたら…」と想像をめぐらしていただきたい。

