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河出書房新社
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カスタマーレビュー ![]()
振り返って知る、近代
(2006-01-16)
私は“近代”なる言葉を恰もそれ以前よりの断絶を示すかのような文脈で使われることには強い違和感を感じていました。今さすがにそこまで安直な用法で近代化を語る向きは無くなって来たのでしょうが、まだ何処と無く“近代”には光り輝くヨーロッパの残滓を包んで、憧憬と怨念を含んだ、それまでの何処でもない、まったく新しい世界という印象が拭い難く存在しているように思います。そこで、“近代”の先駆者であり、推進者であった世界は一体どんなものだったのかということを知ることが、“近代”とは何なのかという理解にとって必須ものでありましょう。それも制度の変化、思想の変化など、より純化された形而上的部分を引くのではなく、人類の進歩を思案するより、明日の夕食の献立を、お隣さんとの近所づきあいを思案したであろう、人間の卑近でしかも不可欠な日常を追うことによって、その実像に目を向けることによってこそ、本当の近代化の諸相が見えてこようというものではないでしょうか。所詮どんな偉大な政治家も思想家も、第一義的にはその時代の空気を吸っていた生活者であることを出ないのですから。
前置きが長くなりましたが、そこで本書です。本書はまったくそんな痒いところに手が届く、もしくは届かせようとの努力の下に書かれており、必見の書です。茶、砂糖、煙草など嗜好品の普及による一般化とその階級社会への目に見える影響。公害の萌芽と世界の最先端を行くにしては古代にすら劣る、余りにお粗末な社会資本。工場に勤める労働者の一日の描写から、そんな「まっとうな」労働者の中にすら入れてもらえない、その日暮の労働者たちの多彩で悲惨な生活。型や暇をつぶすことが仕事の世界と新しくその中に入るための階梯。この他一章一章、一頁一頁が極めて好奇心をそそられる、興味深く魅力的な情報に満ち満ちており、読んで絶対に後悔しない本と、断言できる一冊です。

