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河出書房新社
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発売日:2008-08-09
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カスタマーレビュー ![]()
不思議な寓話と厳しい愛の物語
(2008-08-12)
「残雪」はペンネームだそうだ。ここに収まっているのは7つの短編だが、とても面白い。単純に、「面白い」のである。なおかつ「不思議な」物語だ。この感覚はフランツ・カフカの作品を思わせる、ということは私に限らず、池澤夏樹氏や近藤直子女史もうなずいているところ。ヘンな読後感だが、まったく重苦しくない。ここもカフカに似ているだろう。
初めて中国文芸作品に触れる、という方にもお勧めである。また書くが、基本的に「おもしろい」のである。この優れた翻訳は学校の国語教科書に載っていてもまったく不思議ではない。
バオ・ニン「戦争の悲しみ」は、文字通り悲しい愛の物語である。タイトルだけ見ると、ヴェトナム戦争批判作品だと誤解する方もいるかもしれない。だが、お読みになられた方にならわかるが、単純な戦争糾弾文芸ではない。ある意味で、ただ戦争の愚かさを前面に出してしまったほうが、(北ヴェトナム軍に入団経験のある)バオ・ニンにとっては簡単なことだっただろう。だが、彼にとって愚かなのは戦争でも米軍でもなんでもなく、「人間」なのだ。人間の本質こそ、彼の糾弾すべき対象なのだ。暴力、殺人に明け暮れ、人間らしい暮らしを送る意義を見出せない人間こそ、愚かな存在なのだ。私はページをめくるたびに、何度かため息が出てしまうのだ、「人間は進歩を知らない生き物なのだろうか」と。バオ・ニンが直接どう感じていたのかは正確にはわからない。けれど、彼だって信じていたはずだ。登場人物のキエンのように、人間にだって、努力すれば、進歩できるだろう、と。もちろん、私だって信じたいことであるが。

