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白水社
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レビュー(Amazon.co.jp)
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???フェルディナンド・ヒラーはベートーベンの棺の横に立ち、偉大な作曲家の髪の毛を一房切ってもらえないかと尋ねた。写真が発明される以前の時代には、これは突飛な申し出でもなく、実際亡くなった人の思い出として髪の毛の房を持つことは広く行われている慣習だった。 ???この歴史的な遺品は、その後ヒラー家に何代にもわたって受け継がれ、「家宝」は不思議なめぐりあわせで第2次世界大戦中、何百人ものユダヤ人をゲシュタポからかくまったデンマーク人医師の手に渡った。誰がどうしてこの骨董品をこの医師に渡したのか、それは2世紀にわたって数えきれない人々の人生をまきこんだ宝探しから飛び出た謎の1つにすぎない。 ?『Beethoven's Hair』はラッセル・マーティン(絶賛を博した『Out of Silence』の著者)が膨大な労力をかけて歴史の断片をひとつひとつジグソーパズルのように当てはめていった大作であり、死者の記念品が時代を超えて受け継がれるに従って、その存在によって運命的なつながりを持った人々に与えた大きな影響を記録している。その歴史的遺髪は世界中の熱狂的なベートーベン愛好家たちから崇拝され、「(ベートーベンの)魂を存在させ、驚異的に命を吹き込み続けている」真の遺品である。 ???このマーティンの著作は、時折19世紀のウィーンに読者を引き戻し、偉大な作曲家の彩り鮮やかな人生を垣間見せている。また今となっては、現代のDNA解析技術のおかげで、かつてはわからなかった音楽の天才となった男の秘密が明かされており、非常に興味深く、引き込まれるような1冊である。(Christopher Kelly, Amazon.co.uk) |

カスタマーレビュー ![]()
死因の謎を解く遺髪
(2008-02-02)
この邦訳を読む気になったきっかけは、主に2つある。クラシック音楽中、ベー
トーベンの作品を幼少から最も愛していたこと。もう1つは、「鉛中毒が死因だ
った」ことが(シンクロトロンを利用した)この遺髪の微量元素分析によって明
らかになったことだ。天才の死因ばかりではなく、聴覚の喪失、持病になった激
しい頭痛、肝臓障害、癇癪もちの性格なども鉛中毒でおおかた説明がつくように
なった。もっとも、一体どんな経路で鉛中毒になったのかについては、ワイング
ラス説、公害魚説、温泉説など諸烽ェあり、まだ謎が完全に解けていないようだが。
遺髪が、この天才作曲家の死後、親友である有名な音楽家の子孫の手から、戦争中
にナチスによる迫害を逃れようとするユダヤ人難民に一夜の隠れ宿を提供したデン
マークのある良心的な市民の家族に、感謝の印として委譲されたという「くだり」は、
なかんずく印象深いものだった。彼の名曲「第9」や「運命」を聞きながら、この
本を読むと、臨場感に溢れ感銘度がさらに倍加するだろう。
この本を読んで思い出したのは、水俣病の原因(水銀中毒)がやはり頭髪の分析に
よって、明白になった事実である。驚くなかれ、天才の遺髪分析が、なんと豪州に
住むある(難聴の)炭坑夫の命を救うことになる。この原書を読んでいたベートー
ベンの愛好家が、作曲家の病状が自分自身のそれにそっくりであることに気づいた。
案の定、彼は鉛中毒だった。

偉大な芸術家の真実
(2003-01-30)
この本の面白い点の一つは、平行して異なる時代の物語が描かれている点にあります。一つは、サザビーズの競売にかけられた「ベートーヴェンの遺髪」を落札した実業家のアイラ・ブリリアントと医師のチェ・ゲバラ、そして遺髪の出品者であるミシェル・ヴァーサー・ラーセンらの遺髪に関する粘り強い調査の物語。もう一つは、ベートーヴェンその人と、彼の死後にその頭部から遺髪を切り取ったフェルナンド・ヒラーとその末裔がたどった運命の物語。この二つの物語が、次第に明らかになる謎とともに、やがて一つになる様は圧巻だと思いました。
ベートーヴェンが多くの人に感銘を与える点は、彼が聴覚障害に加え、病身の身という逆境に屈せず、強い意志の力でもって多くの傑作を残した点にあると思います。遺髪を元に現代科学が打ち立てた、ベートーヴェンを苦しめた病についての仮説からも、ベートーヴェンが尋常ならざる強い意志の持ち主であったという推論が成り立ちます。ベートーヴェン崇拝者の多くが信じるベートーヴェン像がここでも見られるわけですが、本書はベートーヴェンの自己中心的、かつ無慈悲な一面にも光を当てています。この辺りなどは、ベートーヴェン賛歌の物語である、ロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』などと比較してみると面白いと思います。

