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日本経済評論社
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下村治ってどんな人?
(2008-07-18)
書名の一角にあるように評伝・日本の経済思想シリー
ズの一巻です。このシリーズのラインアップをみると、福
沢諭吉、渋沢栄一、武藤山治などの常連に、柳田国男
とその対比でいつも悪役されがちの岡田良一郎のご両
人、おまけに北一輝を加えるなど、かなりユニークな選
定になっています。名声の割りには、あまり実像が明ら
かにされていない下村治が対象に選ばれたのは、シリ
ーズのそういう特徴もあったのだろうと思います。
さて、下村治といえば高度成長、「下村が正しかったか、
(高度成長を真っ向から批判した)都留(重人)が正しか
ったのか。その後の日本経済がどのような道を歩んだか
を振り返れば、答えは明らかである」と本書の著者は言
います。そして、そうした彼の立論は、戦後のインフレ処
理の時期から一貫していることを明らかにしたことは、本
書のお手柄だと思います。
ただ、その間に生じたひずみについて、武田晴人は『高
度成長』(2008 岩波新書)でこう言います。「最大の問題
は、物価問題であった。卸売物価が引き続き安定している
にもかかわらず、消費者物価が緩やかに上昇に転じたか
らである」と。そしてわたしの当時の生活実感はこれに近
いものだったし、本書でいう都留の安定成長論により魅力
を感じたものでした。そういう共感は潜在的にはかなり拡
がっていて、その後各地、各所で起きる多様な叛乱の低
奏音となったのではないかというのがわたしの推論です。
正直にいうと、本書で下村の同志として紹介されている
高橋亀吉、この人が大昔の地代論争のときに書いた肩の
力が抜けた論文が気に入り、ずっとファンだったんですよ
ね。この人の評伝のほうが読みたかったな。

