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幻冬舎
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カスタマーレビュー ![]()
「この道より我を生かす道なし」
(2008-08-15)
「この男には不可思議な魅力があった。人間の純粋性と不純性を兼ね合わせていて、つまり、
その相対性のなかで彷徨をくり返していた男……善意と悪意、潔癖と汚濁、大胆と小心、
勇気と臆病といった相反するものを内包した人間……多くの人に徹底して嫌われる一方、
また、多くの人に徹底して愛された男である。……人間としては出来損ないであったが、その
出来損ないにできているところが彼の人間的魅力であった」(「はじめに」より引用)。
おそらくは客観的俯瞰的な記述を心がけたには違いないが、団の文体も近しきが故にこその
愛憎が入り交じり、小池の軌跡にえもいわれぬ奥行をもたらす。
天才に中庸なく、幸福はただひとつ中庸にのみ見出される、ゆえに天才に幸福なし。
狂気と天才は紙一重、とはまさしく文学史の王道パターンのひとつ。
そして時に事実は小説よりも奇なり。小池の凄惨な生涯が表現する滅びの美を前にしては
満たされた書き手による凡庸なフィクションなど所詮、その存在価値を失う。
小池個人や将棋への関心云々を超えて読まれて然るべき名作。

畏怖すべき異形の傑作
(2008-06-24)
読んでいる間、はらわたの奥のほうから熱い興奮と感動がこみ上げてくる傑作。
天才・小池の光と影、その闇の深さよ。団氏は小池を闇から引きずり出し、
メチャクチャにふりまわして(そして振り回され…)本書を書き上げた。
人間とは何と素晴しくも悲しい生き物か。これは団氏が描く、異形のものたちへの賛歌である。

小池重明の生き様そのものが「小説」のようですし、破天荒ですね
(2005-09-12)
将棋が好きで、四半世紀ほど前、相当凝ったことがあります。その頃「小池重明」というアマチュア将棋界において、伝説となっている強さを誇った「真剣師」がいました。
この本はその小池重明の波乱万丈の生涯を綴った小説です。書き手があの特異な官能小説、SM作家として第一人者の団鬼六です。二人の不思議な繋がりは本書で確認していただくとして、異能は異能を認める、というわけですかね。
小池重明の生き方って本当に笑ってしまうほど、ムチャクチャです。「飲む、打つ、買う」の放蕩の限りを尽くし、44才で孤独の内に亡くなりました。型破れですし、破滅型の典型とも言えます。ところが、将棋となるとその天賦の才を発揮し、強豪のプロもアマも打ち破っていきます。
小池重明は、最後の「真剣師」とも言われています。「賭け将棋師」のことで、プロ棋士とは違うのですが、全国に名だたる真剣師たちを次々と打ち負かし、そして日本将棋連盟所属のプロ棋士相手にも勝ち越しました。不世出の「賭け将棋師」です。
プロと対戦するため、連続二期アマ名人となり、特例でプロいりの話も出ましたが、品行が悪く、寸借詐欺事件を起こしたため、アマ・プロ全ての将棋の世界から追放されました。
本当に天賦の才と破滅の運命に翻弄されたかのようにして、44歳で伝説の「真剣師」が人生の幕を閉じました。
本書はそんな小池重明を団鬼六が温かく魅力的に描いています。不可思議な魅力を持ったいき様でした。

まさか…
(2004-11-12)
将棋以外はまるで駄目。でも将棋は修羅の強さ。
小池重明の名前は知ってはいましたが、彼の人生、人となりには、この作品で初めて接しました。
破滅に向かいながらもアマ名人になり、プロ棋士をも圧倒する姿は「凄いなあ」と思いながら読んでいましたが――
なんとあの、十五世名人大山康晴までも角落ちとはいえ負かしてしまったという衝撃的過ぎる事実!
(などと思っていたら、大山康晴は、実は駒落ちは不得手だったそうな。ともあれ)
「将棋の化物」という団鬼六先生の評が一番しっくり来る感じがしました。
でも。
天才の末路は、幸福が約束されているとは限らないのです。
棋譜とかはないので、将棋をあまり知らない人(私もそう)でも無問題。
伝説の真剣師の、血肉の通った実像が、あくまで淡々とした団先生の筆致によって迫り来る!
将棋の魔物に気に入られてしまった一人の男の、凄絶な生き様を。

…圧倒。
(2004-01-07)
断然面白い。
小池重明の無茶苦茶さもさることながら、
それに惹かれていく周囲の人々と、
それを次々と裏切り、自殺同然の最期。
見事、と言うよりいっそ「美」事。
こういう野趣溢れる作品を書く人がいるのは、
なんとも嬉しく、心強い限りだ。

